嫌われ者に恋をしました
(5)お礼と伏線
朝、目が覚めると、目の前で雪菜はぐっすり眠っていた。枕に顔を半分埋めて、ほんの少しだけ口を開けて寝ている顔があまりにもかわいくて、しばらくじっと見入ってしまった。
普段は見られない雪菜の寝顔。会社で見るよりかなり幼く見える。化粧はしてもしなくても同じように見えたから、そういうことじゃないんだろう。
つい触りたくなったが、触ったら起きてしまいそうでやめた。
気がつくと外はもうずいぶんと明るい。時計を見ると8時を過ぎていた。雪菜は全く起きる気配がない。寝たのはきっと3時頃だったから無理もないだろう。
瞼を開けて黒い瞳を見せてほしかったが、とりあえず腹も減ったし何か買ってこよう。
隼人は雪菜を起こさないようにそっとベッドから這い出した。
顔を洗ってふと自分の顔を見た時、雰囲気が違うと言ってじーっと見ていた雪菜を思い出した。そんなに違うだろうか。自分ではわからないものかもしれない。
あー、煙草吸いたい。でも我慢。ガムにどれほど効果があるんだろう。気休めでも何でも、まあいいや、とガムを噛んで出かけた。