嫌われ者に恋をしました
「あの……、これから不動産屋さんに電話をして、家の鍵を替えてもいいか、聞こうと思います」
「借家だから聞かないといけないんだ?」
「はい。替えても良いということだったら鍵屋さんを探してみようかなと思って……」
不動産屋も鍵屋も休みならいいのに。まだそんなことを思っている自分が少し残念になる。
「鍵、交換するまで一緒にいるよ。心配だし」
「でも、せっかくのお休みなのに」
「せっかくの休みで一緒にいられるから、一緒にいたいんだけどね」
「え?……はい」
「一緒にいたくない?」
「そんなわけ、ありません」
「じゃあ一緒にいよう」
「はい」
ちょっと強引に誘導してしまった。こんなことを繰り返していたら嫌われそうだな。
「じゃあ、ちょっと電話してきます」
そう言うと雪菜は立ち上がってリビングを出て、廊下で電話をし始めた。
結局、不動産屋はお盆だというのにしっかり営業していて、自費で替えるならという条件で鍵を替えることに了承した。
その後ネットで探した鍵屋も当り前のように営業していて、昼前には行きますと言われたらしい。
鍵を替える手続きは残念ながら着々と進んでいる。でもまあ、仕方がない。今日は家に帰してあげよう。