嫌われ者に恋をしました
迷うことなく辿り着いた下杉営業所は、以前雪菜が監査について行った営業所よりずっと大きかった。女性に案内されて会議室に入ると、資料も既に用意されていて、前回のように「この資料を出してください」といちいちお願いしなくてもよさそうだった。
聞いていた通り、この方が楽かも。
「小泉さんも初めてなんでしょ?」
今まであまり喋らなかった永井が話しかけてきた。
「いいえ、昨年一度だけ同行したことがあります」
「ふーん、じゃあわからないことがあったら教えて」
「お教えできるほどではありませんが……」
「そう?じゃあ、協力して頑張ろうね」
永井はにっこり笑った。優しそうな雰囲気。雪菜は「はい」と静かに頭を下げた。
経理関係は隼人と雪菜が、それ以外は柴崎課長と永井が見るということで役割分担をした。
雪菜は指サックをはめて伝票をめくった。疑問のある部分には付箋を付けていく。紙をめくるシュッシュッという音だけが静かな会議室に響いた。