嫌われ者に恋をしました
「キスしていい?」
雪菜が潤んだ黒い瞳をこちらに向けて何か言おうとしたから、言う前にその柔らかい唇を塞いだ。全てを自分のものにしたくて、自分だけを見てほしくて、小さく悶える雪菜を腕に感じながら深く深く追い求めた。
玄関先で昼間からこんなキスをしていること自体が扇情的で、もう抑えられないと思った。
「抱いてもいい?」
そう囁いた途端、力が抜けて柔らかかった雪菜の体は一瞬でビクッと硬直してしまった。
「イヤ?」
「……イヤでは、ありません」
じゃあ何なんだろう。雪菜は間違いなく嫌がっている。
「俺が怖い?」
「そんなこと、ありません」
そうは言っても嫌がっている。昨日と同じで固まってしまった。頭の奥がスッと冷たくなって冷静になっていく自分を感じる。この人を無理やり抱くことなんてできない。
うつむいてしまった雪菜を覗き込んで、軽くチュッとキスをした。
「今日はやめとく」
「……ごめんなさい」
謝られるとますます辛いな。まだそこまで俺には心を開いていない、ということだろうか。
隼人はため息をついた。