嫌われ者に恋をしました
「そういえばさ」
二人とも沈んでしまったので、雪菜を抱き締めたまま隼人は思い出したことを口にした。
「雪菜が行きたい所ってどこ?子どもっぽくてもいいですかって聞いてきただろ」
「あ、あの。それは、えっと……」
「動物園とか?」
「えっ!……どうしてわかったんですか?」
「子どもっぽいって言ったら動物園とか遊園地だからさ」
「はあ、そういうものですか。実は動物園に行ってみたかったんです」
「行きたいなら行ってもいいけど、夏の動物園はおそらく地獄だと思うよ」
「え?」
「この炎天下でも屋根少ないし、混んでるし。まあ、夏休みなんてどこに行っても混んでるけどね」
「そうなんですね……」
動物園に行ったことがないとは。世間知らずというか、いろんな経験が乏しいんだろうか。世間知らずな雪菜はきっと、夏の行楽地の混雑ぶりを知らないんだろう。
「水族館ならまだマシかもよ。混んでるとは思うけど、屋根があるからね」
「行ってみたいです、水族館」
雪菜は嬉しそうに目を輝かせた。動物園に行ったことがないなら水族館もないだろうとは思ったが、本当になかった。
「いいよ。じゃあ、明日は水族館に行こうか」
そう言って隼人は雪菜に微笑んだ。