嫌われ者に恋をしました
見上げると上の方を少し苦しそうに泳いでいるマグロがいた。
「ああ!あのマグロは死んでしまいそうです」
隼人を見上げて、雪菜が指をさしてそう言うと、隼人はプッと吹き出した。
「さっきそこにいた小学生が全く同じことを言ってたよ」
「ええっ!」
「夢中になってる雪菜、すごくかわいいよ」
「……バカにしてます?」
「してない、してない。ホント、かわいいよ」
笑われてしまった……。小学生と同じことを言うなんて、本当に情けない。
「少し休もうか」
確かに少し疲れたかもしれない。雪菜はうなずいた。
そこには壁一面の水槽を見ながら座れるように、たくさんのベンチが並んでいた。隼人に手を引かれて雪菜はベンチに腰をかけた。座っても手を繋いだままでいることが、雪菜は秘かに嬉しかった。
「すごい夢中になって見てたね」
「そ、そうでしたか?」
「うん、水槽一個一個にへばり付いて見てたから」
「そんなっ、へばり付いてなんかいません」
「いやいや、へばり付いてたよ」
言われてみたらそうだったかもしれない。子どもっぽいと思われたかな。こんな子どもっぽい私のことなんて、嫌いにならないかな。
「……子どもっぽいですよね?私」
「いや、こんなに喜んでもらえて、連れてきた甲斐があったよ」
隼人がギュッと手を握ったから、雪菜もそっと握り返した