嫌われ者に恋をしました
「ちなみにね」
隼人はもう一度水槽を見上げると、言葉を続けた。
「内部監査なんて役割をさせてもらえて、俺は良かったと思ってるんだよ」
「……そうなんですか?」
「うん。電機業界なんて体質古いからさ、どんなに偉ぶっても社会の流れから取り残されて、どんどん落ちていく一方なんだよ。でも、この会社に入った以上はやっぱり愛着を持って長く働きたいし、貢献したいと思うからね。
上の方の権力構造がここ数年で変わってさ、監査を取り入れることになった時、俺を指名してもらえて嬉しかったよ。内部監査なんて確かに嫌われ役だけど、古い体質からの脱却が主流になっている現状としては、地味に先頭に立っているとも言えるし。
それでも、会社としては『内部監査をやっています』って証拠作りに過ぎない側面もあるんだけど。これだけ組織が大きくて歴史も長くて人も多いと流れを変えるのは簡単なことじゃないから、変わっていく一端を少しでも担えるなら、例え嫌われる立場であっても、俺はいいと思うんだ」
隼人の仕事に対する考え方なんて初めて聞いたから、雪菜は圧倒されてぽーっとしてしまい、あいづちも打てずにいた。
「一方的に話し過ぎた?」
「い、いえ。すごいなと思って」
「俺が?」
「はい」