嫌われ者に恋をしました

 雪菜が尊敬のまなざしで見上げると、隼人は少し自嘲するような表情をした。

「いや、結局は会社にいいように使われているしがない中間管理職だよ。それっぽい理由をつけてるだけでさ」

「でも、ご自分の考えをきちんと持ってお仕事をされているなんて、素敵です」

 雪菜の言葉が堅過ぎて、隼人は少し目を細めた。

「雪菜……、なんか丁寧過ぎない?これから二人でいる時は敬語も使わないでほしいな」

「ええっ!そんな……、急にはちょっと」

「……瀬川には敬語じゃなかっただろ?」

「え?」

「電話で話してる時、敬語じゃなかった」

 隼人の少し怒ったような横顔を見て、雪菜は聞いてはいけないような気がしたけれど、つい聞いてしまった。

「……ヤキモチ妬いてるんですか?」

「そうだよ。ヤキモチを妬いてる」

 自分で聞いたくせに、ハッキリそう言われてしまうと、なんて答えていいのかわからなくなった。

「瀬川のことより、俺を好きになってほしいんだよ」

「そんな……」

 そんなことを思っていたなんて……。私には隼人さんしかいないのに。私の中は隼人さんでいっぱいなのに。

「あんな風に泣くくらい、瀬川のことが好きだったんだろ?」

 あの時のこと……、そんな風に思っていたんだ。

「それは、違います」
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