嫌われ者に恋をしました
「そろそろ行こうか」
「はい」
隼人に手を引いてもらい、雪菜は立ち上がった。
大きな水槽の空間を抜けると外に出た。太陽の光に一瞬目が眩み、強い熱気を感じる。
「あ!ペンギン!」
目の前には岩山があって、群れるペンギンの姿が見えた。雪菜が嬉しそうな顔をして隼人の手を引くようにしたから、隼人も微笑んだ。
「ペンギンはね……」
隼人がそう言いかけた時、すぐ横にいた小学生の兄弟が、ペンギンのいる岩に向かって手鏡で太陽の光を反射させた。するとペンギンはその光を追いかけて、一斉に顔を動かした。
それを見て雪菜は目を見張って「わあっ」と言った。
「ちぇっ、俺が教えてやろうと思ったのに」
隼人が少し不機嫌な顔をしたから、そんな子どもっぽい隼人がかわいくて雪菜は微笑んだ。
「私もやってみてもいいですか?」
雪菜がそう言うと、隼人はスッと雪菜の後ろに来て、背後から抱き締めるようにそっと包み込んだ。こんなに大勢の人がいる所でそんなことをするなんて雪菜は驚いてしまい、固まってしまった。
「あ、あの、えっと、こんなこと……」
「別にカップルならそんなにおかしなことじゃない」
「で、でも」
「いつまでも敬語だから」
「ええ!そんな……」
「ほら、手鏡出してやってみなよ」