嫌われ者に恋をしました
「……遊園地、でしょうか」
「いいよ、じゃあ遊園地も行こう」
「その次は隼人さんの行きたいところです」
「ええ?うーん、行きたい所ねえ」
隼人はハンドルを握って前を見ながら唸っていた。
「そんなに考えちゃうんですか?」
「いや、俺はね、旅行に行きたい」
「え?旅行?」
「嫌?」
「いえ、旅行なんて行ったことがなくて……」
「じゃあ、旅行も行こう」
「はい……」
旅行なんて、そんなイベント、ドキドキしてしまう。
「行くとこいっぱいあって、忙しいな」
「……なんか、すみません」
「そうじゃないよ。雪菜と一緒にいろんな所に行くのが楽しみなんだ」
そんなことを言われたら嬉しくて、また胸の奥がキュウッと痛くなった。
隼人と一緒にいると全てが新鮮で、美乃里と一緒の時とは違う楽しさがあって、雪菜は幸せで心が満たされていくのを感じた。
この人を失ったらきっと心が死んでしまう。本当にそんな気がした。
失いたくない。そう思ったら、またヒタヒタと失う恐怖が忍び寄ってくるのを感じた。
それでも隼人さんを信じてみよう。だって、この人はいつも優しくて誠実で。それに誓ってくれたもの。私の願いを聞いて煙草もやめてくれた。
そう思ったら、少しだけ心が強くなって恐怖はフッと身を潜めた。