嫌われ者に恋をしました
講評には下杉営業所の所長と業務課長が同席した。総務課と監査課がそれぞれ話をするのかと思ったら、総務課長の分も隼人が説明していた。さっき総務課長にこそこそと話かけられていたから、押し付けられたんだろう。
「概ねきちんと管理されていると思います。ただ、幾つか付箋を付けている物品については備品管理簿の記載漏れの可能性がありますので、確認して改善してください。あとは職員の会費などを集めておられるようですが、この会計には正確な記録がないようですので、記録してくださいますようお願いします」
前の時と同じ、丁寧な言い方。なるべく気持ちを逆立てないように言っているのを感じる。でも「職員の会費」の所で下杉営業所の所長がピクッとしたのがわかった。雪菜も所長はきっとそこに反応するだろうと予想していた。
下杉営業所の所長は、腕を組んで少し腰を下にずらして座ってから言った。
「機材はまだ廃棄してないから幾つかは倉庫にあると思うよ。それから、職員の会費なんて、会社のお金じゃないんだから、あなたが言うことじゃないでしょう?」
「ご存じの通り、監査が各営業所に入ることになったきっかけは、一昨年度に立て続けて起きた金銭管理の不祥事です。職員の会費とはいえお金ですから。社の方針として、社内に保管されている金銭は全て確認させていただいております」
「ふーん、そうなの。あんたも若いのに大変だね」
「いえ」