嫌われ者に恋をしました
「カバン、ここに置いておくからね」
「はい、ありがとうございます」
「……やっぱり堅いな」
「え?」
「雪菜の話し方」
「あ、えっと、それについては考えがあるのです」
「なに?急に改まったね」
「えっと、すぐには無理なんですが、無理に敬語をやめなくても、一緒にいたら少しずつ自然と二人だけの話し方になっていくんじゃないのかなと思ったんです」
「へえ?」
「だから、もう少し時間がかかってもいいですか?」
「うん、いいよ。雪菜がそう思うなら、いいんじゃない」
「はい、ありがとうございます」
雪菜が隼人を見て微笑むと、隼人は思い出したようにハッとして唐突に抱き寄せた。
「帰ったらこうするんだった」
「うっ」
急に強い力で閉じ込められて、つい呻き声が出てしまった。
「強過ぎた?」
「だ、大丈夫です」
少し力が弱まったから、急いで息を吸った。
「ごめん、苦しかったね」
「大丈夫なのです」
力が緩んだら、やっぱり強く抱き締めてもらいたくなった。
同時に好奇心が湧いてきて、雪菜は普段なら絶対にできないことをできる気がした。