嫌われ者に恋をしました
雪菜は天かすを買ったことがないらしく、どこに置いてあるのか迷っていた。「蕎麦うどんのコーナーにあるよ」と連れていくとやっぱりそこに天かすが並んでいて、雪菜は目を輝かせて「あった!」と指をさして喜んだ。
この人は突然子どもになったり大人になったりする。そんな風に瞳の色がころころ変わる雪菜に俺は翻弄されまくっている。
「あと紅ショウガだね」
「一緒に置いてありますね」
紅ショウガを手にとって雪菜はにっこり笑った。そんなに買い物が楽しいなら毎日だって来たい。
帰り道、手を繋ぐと雪菜が見上げてきた。
「隼人さんはよくお料理をするんですか?」
「よくってわけじゃないけど、まあ、それなりに。面倒な時は買って帰ったりもするし」
「そうですか」
「なんで?」
「なんか、お買い物慣れしてるような気がしたので」
「一人暮らし始めてからけっこう経つからね」
「何年ですか?」
「3年かな」
「3年ですか……」
「それまでは横浜の実家から通勤してたから、遠くて大変だったんだ」
「横浜がご実家なんですか?」
「そう」