嫌われ者に恋をしました
家に帰ってお好み焼きの材料を並べたところで、秘かな野望があったことを思い出した。
「雪菜、粉を使うから着替えた方がいいんじゃない?」
「え?」
「せっかくかわいいワンピースなのに、汚れるよ」
「あっ、それは大丈夫です!」
「え、なんで?」
雪菜はカバンからがさごそと何かを取り出して持ってきた。
「ほらっ!エプロン、持ってきましたから!」
嬉しそうにそう言ってエプロンをつける雪菜を、少し恨めしそうに見つめた。そんなものを持ってきているなんて。だからあんなにカバンがでかいのか。部屋着に着替えてほしかったんだが。
エプロン姿の雪菜もかわいいから、まあ仕方がないか。心の中で舌打ちをして作業に取りかかった。
作業と言っても雪菜がキャベツと肉を切ってくれたから、後は混ぜるだけ。
実家の母親に「もう使わないから、粗大ごみで出すよりはねえ」と言われて押し付けられたホットプレートを押し入れから引っ張り出してきた。弟も母親もなぜか不要になった物を俺によこす傾向がある。
「貰ったのはいいけど、こっちに来てから使ったことないんだよ、これ」
「年季が入ってますね」
年代物のホットプレートは、それでもちゃんと働いてくれた。