嫌われ者に恋をしました
「うちのやり方でいい?」
「はい」
「うちでは先に肉を焼いて、焼けたらその上に生地を乗せてたと思うんだ」
雪菜はじっと肉の焼ける様子を見ていた。どのくらい焼くのかなんて忘れたから、それなりに焼けたところで生地を乗せてみた。
おたまで生地を流し込む様子を見ながら、雪菜が不思議そうな顔をして言った。
「お好み焼きを焼いている隼人さんと、会社の課長が同一人物とは、とても思えません」
「そりゃ、そうだろうね」
そう言われると、自分でもちょっとおかしくなってクスッと笑ってしまった。
「ここまでは俺がやったから、雪菜はひっくり返す係」
「ええっ!それは……、プレッシャーです」
「大丈夫だよ」
うーんと言いながら、雪菜はホットプレートを覗き込んで、フライ返しをお好み焼きに恐る恐る差し込んだ。あんまり真剣な顔をしているから、ひっくり返そうとした瞬間を狙って、わざと口を出してみた。
「アッ!」
雪菜はびっくりしてハッと息を吸って手を引いた。
「なっ!どうしたんですか?急にっ!」
「あははっ、わざとだよ」
俺が笑ったら、雪菜もつられて笑った。こんな風に雪菜が声を出して笑っているのを目の前で見られるなんて、本当に幸せで嬉しかった。