嫌われ者に恋をしました

 雪菜は初めてやると言いつつ、そつなく上手にひっくり返してお好み焼きは無事完成した。

 取り分けてソースをかけていたら雪菜がハッとした。

「そういえば、青海苔を買うの、忘れました」

「まあいいんじゃない。歯に青海苔が付いてる雪菜も見たかったけど」

 雪菜は赤くなってうつむいた。

「そんなの、見てはいけません」

「じゃあ、他のは見ていいの?」

「他のとは?」

「いろいろだよ」

「えっと……」

 雪菜がいちいち赤くなるから面白くて、つい絡んでしまった。

「熱いうちに食べよ」

「はい」

「いただきます」

「いただきます」

 お好み焼きの味はまあ普通にうまかった。それより、こうやって雪菜と一緒にいて、一緒に作った時間がたまらなく大切なものに思えた。

「隼人さんはお酒は飲まないんですか?」

「お酒?まあ、それなりに飲むよ。家にいる時はビールくらいだけど。雪菜、飲みたいの?」

「いえ、私はそんなに飲めないので」

「ふーん、そうなんだ?俺も今日はいいよ」

 本当はだいたい毎日飲んでいるが、今日は飲みたくない。

 飲んでもそんなに酔わないが、雪菜と一緒に過ごすんだから、今日はしらふでいたかった。
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