嫌われ者に恋をしました
隼人が酒を飲む気配がなかったから、雪菜は少し安堵していた。飲むことが嫌なわけではなかったが、瀬川にはいつも酌をさせられていたから、それは少し嫌だった。飲む時はこの人もやっぱり注いでほしいんだろうか。
それにしても、エプロンを持ってきて良かった。ちょっとした備えとして持ってきたが、まさか一緒にお好み焼きを作ることになるとは思わなかった。
一緒に料理を作るのは、すごく楽しかった。お好み焼きを作る隼人の姿は、今まで一度も見たことがない姿だった。手慣れた様子なのも意外だったが、料理をしている隼人には不思議な男の魅力があって、雪菜は秘かにじっと見つめてしまった。
片付けをした後、二人でソファに座って喋った。昨日の夜も電話で喋って、今日も一日ずっと一緒にいて喋っていたのに、すごく楽しくて全然話し足りなくて、本当に不思議だった。まだまだもっと喋っていられるような気がした。
「もう時間も時間だから、お風呂に入っておいで」
そう言われて、ドキッとした。もうこんな時間……。もっとお話ししていたい。でも、そう言うわけにもいかない、か。
雪菜は黙ってうなずいた。
この間も借りたお風呂だけれど、やっぱり自分の家じゃないと緊張する。でも、緊張するのはそれだけが理由じゃない。
シャワーを浴びながら考えた。もうさすがに今日は断れない。私が怖がって固まると隼人さんは手を出さない。でも、そんなことを繰り返してるわけにはいかないし。
怖いと思うのはなぜだろう。痛いことをされるのが嫌だから?優しい王子様じゃなくなることが嫌だから?どっちも、なのかな……。
結局、気持ちの整理がつかないまま、髪を乾かしてリビングに戻った。