嫌われ者に恋をしました

「どうして嫌いになるなんて思ったの?」

「……こんな傷痕があったら、嫌われるんじゃないかと思って」

「そんなわけないだろ。それに傷痕って言っても、見た目は全然わかんないよ。だいたいね、もっとすごい傷痕があっても、嫌いになんてならないし」

 雪菜が頭を胸に擦り付けて、しがみ付くように隼人に抱き付いたから、隼人もぎゅうっと抱き締めた。

「火傷したの?それとも怪我?」

 雪菜は小さく震えるため息をついた。

「……煙草を……」

「え?」

「……煙草の火を、押し付けられて」

 最初は何を言っているのかわからなかった。でも、雪菜の言葉の意味がだんだんわかってきて、ショックで目を大きく開いた。

 雪菜を引き剥がして肩を掴むと、勢いよく聞いた。

「瀬川にやられたのかっ!」

「ち、違います」

「じゃあ、その前の男か?」

「そんな人、いません」

「じゃあ、誰だよ?」

 雪菜は苦しげな瞳をしてため息をついた。

「……お母さんの、彼氏に」

「え?」

 苦しげな瞳のまま、雪菜はフッと微笑んだ。

「もうずっと昔です。本当に子どもの頃。私が小学校1年生か2年生くらいの時です」

「そんな、ことって……」
< 221 / 409 >

この作品をシェア

pagetop