嫌われ者に恋をしました
「でも……、私が関わったせいで迷惑をかけたのは本当です」
「誰に迷惑かけたの?」
「えっと、お世話になった本屋さんとかネットカフェとか……」
「なにそれ?どういう迷惑?」
隼人は眉を寄せて、よくわからないな、という顔をした。
「ええっと……例えばですね、中学生の頃、お母さんの彼氏がずっと家にいて、怖くてあまり家にいられない時期があったんです。
家の近くに深夜1時まで開いている本屋さんがあったので、いつもそこで立ち読みをして時間を潰していたんですが、本屋さんのご主人が私の事情を知って、ご厚意でスタッフルームで本を読ませてくれていたんです。
でも、それがお母さんにばれてしまって。お母さん、私がお母さんのことを告げ口してるんじゃないかって思ったみたいで、お店にものすごい剣幕で怒鳴りこんだんです……。あんなに親切にしていただいたのに。私のせいであの人たちには迷惑をかけてしまいました」
「それは雪菜が迷惑だったんじゃなくて、お母さんが迷惑だったんじゃん!」
「でも、私が関わらなければ何もなかったわけですから。私がいけなかったんです」
「……そう思っちゃうんだ」
「お母さんがキレて怒鳴ることは、それ以降も何度かありました。お母さんは私が誰かと関わると、告げ口をしてるって思うみたいで……。友達なんて作ったら怒っちゃって大変でした。だから、友達は作れませんでした。
最初はお母さんが怖くて人と関わらないようにしていたんです。でも、だんだん人と関わること自体が怖くなりました。関わったら、何かとんでもない迷惑をかけるんじゃないかって。
でも、本当に私、迷惑なんです。この間のコンビニだって、私が逃げ込んだせいであんな騒ぎになって、ご迷惑をおかけしてしまったし」
「別に雪菜が迷惑かけたわけじゃないよ」
隼人にそう言われても、雪菜はやっぱりそうは思えなかった。でも、そう思えない自分って何なんだろうと雪菜はふと自分を省みた。