嫌われ者に恋をしました
考え方を急に変えるなんてことは、たぶんできない。これからも隼人さんとの幸せを純粋に幸せと感じることは簡単にはできないと思う。でも、隼人さんを信じて、人に対する感謝の気持ちを持ったら、自分の中の何かが少しは変わるような気がする。
そもそも、変化すること自体を恐れていたのに、変わりたいと思う自分がいる。隼人さんともっと深く関わりたい。隼人さんと一緒にいたい。隼人さんのことを知りたい。自分のことを知ってほしい。
こんな気持ちは初めて。
「あと、こんなこと聞いていいのかわかんないけど」
隼人が少し考えながら聞いてきた。
「何でしょうか?」
「……お母さんはいつ亡くなったの?」
それを聞かれたらはっとして少し黙ってしまった。
「いや、無理に話さなくてもいいよ」
雪菜は首を振ると思い切って話し始めた。
「いえ、私が高校3年生の時です」
「高3か……」
「……あの時私、初めてお母さんと言い合いをしてしまったんです」
「えっ?初めて?それまで言い合いをしたこともなかったの?」
「はい……。イライラされるのが嫌だったし、やっぱり叩かれるのも嫌だったので」
「そっか……、そりゃ叩かれるのは嫌だよね」
隼人はそう言うと雪菜の髪を撫でた。
「お母さんは私が高校に行くのも渋っていたくらいだったので、大学なんか絶対行かせないって言われていたんです。
でも、私どうしても大学に行きたくて、自分でお金貯めて行くからいいでしょってお願いして、高校の時に頑張ってアルバイトをして大学の資金を貯めたんです。私、どうしても家を出たくて……。
なんとかこっちの大学に受かって、家を出ることになったんですが、そうなったら急にお母さんがおかしなことを言い出して……」
「おかしなこと?」
「はい」