嫌われ者に恋をしました
(9)無神経の宴
しばらく二人とも黙っていたが、隼人は雪菜の髪に頬を寄せるとつぶやくように言った。
「もしよければ、なんだけど」
「……何でしょうか?」
隼人は少し間を置いてから言った。
「明日、俺んち行く?」
「?」
雪菜は、隼人さんの家はここでは?と思い、首を傾げてじっとした。
「俺んちって言うか、俺の実家」
「え?……エエッ!!」
驚いて、思いっきり身を引いてしまった。そんなっ!実家に行くなんてっ……!
そんなこと、いきなり爽やかに言われても困る。それは隼人さんのご両親とか弟さんに会うということだろうか。ご挨拶……?お付き合いさせていただいています、みたいな?そんな……いきなりハードルが高過ぎる。
「あ、いや。無理にとは言わないけど」
雪菜が激しく動揺したのを見て、隼人は苦笑いをした。
「む、無理ではないですが、そんな急に……。何を着て行ったらいいのか……」
「そんなに堅く考えなくて平気だよ。なんならその部屋着でもいいよ」
「ええっ!そんなの無理です!」
「まあ、ほんのちょっと顔を出しに寄るだけだから」
「はあ……」
「挨拶に行くとかそんな形式ばったことじゃないんだ。もちろん、雪菜とのことが真剣だから家族に会わせたいっていうのは前提としてあるけど、そうじゃなくて……。俺の家族の話をしてあげようかと思ったんだけどね、実際に見てもらった方が早いかなと思ったんだ」
隼人は少し照れくさそうに言った。いきなり実家なんて戸惑ったものの、少し照れる隼人を見て自分のことを真剣に考えてくれていることを実感し、雪菜は胸がじわっと温かくなるのを感じた。