嫌われ者に恋をしました
雪菜が持ってきた大きな荷物には、何日分の服を入れたんだろうと思うくらい、たくさんの服が入っていた。雪菜は「1日分のつもりだったんですが、迷ってしまって……。とりあえず思いついた物を入れてしまいました」と言っていた。
仕事の時は迷わずテキパキと判断しているのに、意外だった。実は優柔不断なんだろうか。そんな雪菜を知っているのは自分だけ、と隼人は一人で優越感に浸った。
雪菜が横浜に行ったことがないと言うから、今日は実家に寄った後、横浜見物にでも連れて行こうと思っていた。でも、実家で間違いなく足止めを食うから、予定通りには過ごせないだろう。だからあまり細かい予定は立てずに過ごすことにした。
「本当に大丈夫でしょうか?」
実家に向かう車の中で雪菜は不安そうに言った。相手の実家なんて緊張するのはわかるが、雪菜は必要以上に不安になっている。
「大丈夫だよ。雪菜が心配するようなことは何もないから。憂鬱なのはむしろ俺だよ」
「はあ……」
「あいつら全然デリカシーないから、前の彼女のこととかガンガン言ってくると思うけど、本当に気にしないで」
隼人がそう言うと、雪菜はじっと見つめてきた。視線に気がついて隼人は、雪菜をチラッと見た。
今日の雪菜もかわいい。「ミノリちゃんに見立ててもらったのに一度も着ていない」というワンピースは、清楚で雪菜に似合っていた。
雪菜は隼人をじっと見たまま悩んでいるようだった。
「前の彼女のこと、知りたいの?」
隼人の言葉に雪菜は驚いてビクッとした。