嫌われ者に恋をしました
「他の子なんて『あいつ近くまで寄って来た』とか『目つきがヤラシイ』ってだけでバンバン言ってくるのに」
「そう、なんですね?」
「……それとも触られんのが好きなの?」
「そっ、そんなわけありません!」
しばらく二人とも黙っていたが、両手を組んで隼人が口を開いた。
「だから、……不倫なんかしてんの?」
雪菜は一瞬で凍りついた。テーブルの一点から視線を離すことができなくなって、固まって動けなかった。
どうして、そんなこと……。
目の前に、湯気の上がるパスタが運ばれてきた。でも、全然動けない。
「別に瀬川から聞いたわけじゃないけど」
雪菜は瀬川から隼人は同期だと聞いたことがあった。
でも、瀬川さんから聞いていないならどうして知ってるんだろう。
「なんで不倫なんかするんだよ。ただの遊び?誰でもいいのか?それとも、奪い取れるとか思ってんの?お前、向こうの奥さんの気持ちとか考えたことないだろう?」
隼人は眼鏡を中指でスッと上げた。
「おとなしそうなフリして、やることはずいぶん大胆なんだな」
もともと威圧的なのに次々まくし立てられてすごく怖い。それにすごく攻撃的……。どうして急にこんなこと言い出したんだろう。