嫌われ者に恋をしました
「雪菜ちゃんも27には見えないよ。俺たちの方がお似合いかもね~」
「もう、いいから!やめろよ、そういうの!」
「ヤキモチ妬きだな~」
「嫉妬深いのよ!」
「そうなんですね!」
「っ!雪菜までそんなこと言って!」
雪菜は母親と悠人のペースを掴んで、波に乗ることを覚えたようだ。隼人は分が悪くなったが、思いのほか早く雪菜が家族に馴染んだのが嬉しくて、ふっと微笑んだ。
「壊れてるよ、兄貴」
「え?」
「雪菜ちゃんにいじられて笑うなんて」
「……もういいよ、何とでも言えよ」
「開き直るなんて面白くない子ね。雪菜さん、この子のこと、好きなだけいじっていいから。いじるとちゃんと返してくる所だけが、この子の長所なのよ!」
「それだけじゃないだろ!」
「ほらね!」
雪菜はクスクスと笑った。
「はい、わかりました」
「よかったわね、私たちがいなくてもいじってもらえるわよ!」
「別に望んでいるわけじゃない」
「ホントは楽しんでるくせに~」
「そう見えますね」
雪菜の楽しそうな顔を見たらすごく嬉しくなったが、顔に出すとからかわれるから、わざとムスッとした顔を作った。
「はあ……、もう帰る」
隼人がため息まじりにそう言うと、母親は真面目な顔をして隼人をつつくと、台所に連れ出した。
「賞味期限ギリギリの納豆とか食いかけのパンとか、いらないよ」
「そんなもの、もうあげないわよ!」
「じゃあ、何?」
母親は小さくため息をついた。