嫌われ者に恋をしました
「アンタ、女を見る目がないから疑って見てたけど……、あの子猫被ってるわけでもないし、本当にいい子みたいだから、逃しちゃダメよ」
「あ?ああ。誤解があるようだから言っておくけど、俺に女を見る目がないんじゃなくて、俺に寄ってくる女がダメなだけだから」
母親は思いっきり隼人の肩を叩いた。
「バカね!どっちも同じよ。とにかく、あの子はいい子だから、大事にしなさい」
「それは言われなくても、もちろん」
「ただあの子……、ちょっと影があるのよね」
「え?」
悠人だけでなく母親までそう感じたのか。
「本当は彼女のこと、根掘り葉掘り聞きたかったんだけど、最初ここに来た時、土管に隠れる怯えた仔猫みたいだったから、とてもじゃないけど聞けなかったわ」
「まあ、ね。でも、最初に母さんがビビらせたからいけないんじゃないの?」
「私はそんなたいしたことしてないわよ。だいたい、今まで私にビビった彼女なんていなかったじゃない!玄関でアンタの後ろに隠れる子なんて雪菜さんが初めてよ!」
「……それもそうだね」
「まあ、少しは馴染んでくれたみたいで良かったわ。また連れてきなさい」
「ありがとう、また連れてくるよ。……母さんには言っておくんだけどさ、彼女は家族が亡くなって、もう誰もいないんだよ。亡くなった時の経緯で傷ついてるから、今度来ても家族のことは聞かないでもらえる?」
「なるほどね……、それで連れてきたんだ」
母親はニヤニヤと隼人を見た。
「何だよ?」
「アンタは優しい子だねえ。雪菜さんのこと、大事にしなさい。アンタには幸せになってほしいのよ」
悠人にも母親にも同じようなことを言われてしまった。結局、心配されて気を遣われていたのは俺だったのかもしれない。
二人がいちいちあの話題に触れてくるのは、俺を元気付けるためか?彼らなりの愛情だったんだろうか。