嫌われ者に恋をしました

 賑やかに見送られて二人きりになったら急に静かになったから、二人で顔を見合わせて笑った。

「バカで楽しい家族だっただろ?」

「本当にとても楽しかったです」

「緊張してたのが嘘みたいだね」

「ホントですね」

 雪菜はふんわり微笑んだ。

「今まで見たことのない隼人さんをたくさん見ることができて、嬉しかったです」

「アルバムのこと?ずいぶん熱心に見てたね」

「あ、子どもの頃の写真もすごくかわいかったんですが、……ご家族と一緒だとツッコミ役なのが、とても意外で……」

「ああ、あれね。アイツら調子に乗って面白がるから、手に負えないよ」

「隼人さんも生き生きしていているように見えましたよ」

 雪菜はふふっと笑った。笑った雪菜はかわいくて、隼人はなんだか照れくさくなった。

「雪菜、俺の写真見たんだから、俺にも卒業アルバム見せてくれるんだよね?」

「いいえ、ダメです」

 いつになくハッキリ強気に雪菜が言い切ったから隼人は驚いた。

「は?なんで!」

「卒業アルバムは野球部員と交換、というのがお約束でしたから」

 それは確かにそういう約束だったが……。

「珍しく強気じゃん」

「いえ……、実は悠人さんからそう言えばいいってアドバイスされたんです」

 アイツ、また余計なことを。そして、すぐに種明かしをしてしまう雪菜がかわいかった。

「そういえば、悠人の言ってた秘密って何?」

「……秘密は秘密です」

「俺に隠し事するんだ」

「え?隠し事だなんて……、そんなたいしたことではありません」

「たいしたことじゃないなら、教えてよ」
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