嫌われ者に恋をしました
(10)上書き
駐車場に停めてあった車に乗りこむと隼人はため息をついた。
「疲れた?」
「いえ、皆さん優しくて楽しくて、お会いできて本当に嬉しかったです。連れてきてくださってありがとうございました」
「いや、それなら良かった。俺の家族はあんな感じだから。みんな言いたい放題でさ。だから雪菜も気兼ねしないで。また来よう?」
「はい」
隼人は内心、雪菜が本当は実家にはもう来たくないと思っているのでは、と不安を感じていたが、雪菜が純粋な表情で嬉しそうにうなずいたから、ほっとした。
「これからどうしようか?」
「これから、ですか?」
「うん、横浜の観光スポットに連れていこうと思ってたんだけど、もうすぐ夕方だもんな。雪菜は、どこか行ってみたい所ある?」
「行ってみたい所……?」
ベタだけど、横浜が初めてなら定番中の定番に行ってみるか。
「ランドマークの展望室とか行ってみる?」
「はい!行ってみたいです!」
「高い所、平気?」
「たぶん大丈夫です」
「じゃあ、行こうか」
隼人は微笑むと車を発進させた。