嫌われ者に恋をしました

 雪菜が泣くのを我慢して鼻をすすったから、隼人がチラッと雪菜を見た。

「どうしたの?エアコン寒い?」

「いえ、大丈夫です」

「……泣いてるの?」

「……」

 そう言われたら急に抑えられなくなって涙があふれてしまった。

「何か嫌いな思いした?」

 隼人が心配そうに聞いてきたから、雪菜は急いで首を振った。

「違うんです。……嬉しかったから」

「……家族に会ったことが?」

「はい、……家族に会わせてくれた隼人さんの気持ちが、嬉しかったから」

 隼人はハンドルから左手を離すと雪菜の右手を握った。

「家族なんてね、何でも言い合えるものだよ。怯えたり我慢したりしなくてもいいんだよ」

「……んっ」

 言葉に詰まって何も言えなかった。ただただ涙がぽたぽた落ちて止まらなかった。

 この人は私を助けようとしている。そんな隼人の思いを感じて、雪菜は静かに泣き続けた。
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