嫌われ者に恋をしました

 雪菜は以前、瀬川から隼人のことを聞いたことがあった。

「あいつ、婚約者に捨てられたんだぜ。笑えるだろ」

 面白そうに話す瀬川の感覚が雪菜には信じられなかった。その話を聞いた時、雪菜は隼人の辛い気持ちを思って、自分も辛くなったことを覚えている。

 でも、隼人に次々と、もう終わったことを突き刺すように言われて、雪菜はどうしても言い返したくなった。

「松田課長だって、……言われたくないことがあるんじゃないんですか?」

「なんだよ」

「こ、婚約者に、捨てられたそうですね?」

「……だから?」

「式場も予約して、マンションも買っていたそうですね」

「それがなんだよ」

「ま、松田課長に問題があったから、その人に……捨てられたんじゃないんですか?」

 雪菜は緊張して心臓が口から出そうな感覚に耐えながら、なんとか最後まで言い切った。
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