嫌われ者に恋をしました
隼人は首を傾げて雪菜をじっと見つめた。
「なに?思ったことって」
「私は、隼人さんの……婚約者だった方との思い出を塗りつぶすことはできません」
「?」
「本当は、私のことだけを知っていてほしいけど、隼人さんは私だけじゃなくていろんな人を知っていて、その過去の記憶を消すことはできません」
「どうしたの?俺だってそんなにたくさん知ってるわけじゃないよ」
隼人が少し勘違いをしたから、雪菜は首を振った。
「私が不倫なんていけないことをしていた過去も消すことはできません。本当はきれいに忘れて、なかったことにしてしまいたいけど、そんなことはできません。
すごく辛い思いをしたけど、あの過去があるから今の私がいて、隼人さんも婚約者の方とのことはすごく辛かったと思いますが、その過去がなかったらきっと今の隼人さんじゃないし、私たちは出会えなかったのかもしれません」
「……」