嫌われ者に恋をしました

 朝、光を感じて雪菜が目を覚ますと、隼人はまだ眠っていた。雪菜は隼人の寝顔をじっと見つめた。

 眠っている横顔は無防備でとても穏やか。でも、この人は会社では冷静な課長。実家に行くとツッコミで、子どもの頃はいたずらっ子で、私を守って助け出そうとする王子様……。時々いじわる王子になるけど。

 ずっと一緒にいたい。ずっとこの人のそばにいて、一緒にいろんなものを見て聞いて、たくさんの時間を共有したい。

 愛しくて頬にそっと触れた。その瞬間パッと目が開いたからビックリして手を引いた。

「イタズラ書きしたな」

「……書きましたよ。額に肉って」

「フフッ」

 雪菜が人差し指で文字を書くように額に触れると、バシッと隼人に手を握られ、二人でクスクス笑った。

 そのまま抱き締められてイチャイチャしながらお喋りをして長時間過ごしてしまった。

 そして、卒業アルバムを見せることになってしまい、押し入れから探し出して見せると、隼人が何度も「雪菜、変わんないね」と言うから少し気恥ずかしくなった。

 こんなに一緒にいていいのかな。もしかしたら、隼人さんは予定を断ったりしたのかな。今さらだけど、今日くらいは離れて過ごした方がいいのかも。そう思い、「明日から会社だし、荷物をまとめたいから」と言って今日は帰ってもらうことにした。

 隼人は「帰りたくなーい」と何度もごねて、一通りごねた後は「オートロックじゃないなんて、ここ本当に女性専用アパートなの?」と心配し始めて、それを理由になかなか帰らなかった。
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