嫌われ者に恋をしました
第3章
(1)お仕事再開
朝起きると、窓から入る朝の光も朝のテレビ番組も全て、何事もなかったかようにいつも通りだった。今日から会社が始まる。いつも通りさっさと着替えて、さっさとご飯を食べないといけない。
昨日までの甘い時間が夢のよう。でも、隼人からメールがきて、夢ではないと確信できた。
『おはよう。起きれた?今日から仕事、よろしくね。会社では雪菜って呼ばないように気をつけるよ』
会社に行ったら隼人さんに会える。課長の姿の隼人さん。もうどんな姿だったかハッキリと思い出せないくらい、休日の隼人さんが心に焼き付いてしまった。
いつも通りの変わらぬ通勤電車。でも、隼人に会えると思うと胸がドキドキして雪菜は浮き足だった。
扉を開けてパーテーションを抜けると、隼人は既に出勤していた。
「おはよう」
「……おはようございます」
立っていたのは、髪をまとめて黒っぽいスーツに身を包んだ課長だった。いつも通り、眼鏡の奥は冷たい瞳。もう完全に「隼人さん」ではない。
……でも、どうしよう。すごくカッコイイ。一目で胸がキュンとして、席につくのも忘れてぽーっと見蕩れてしまった。
「小泉?」
隼人の声にハッとした。
「は、はいっ」
「これから管理職会議があるから、しばらく席を外す」
「わ、わかりました」
雪菜はドキドキしながら返事をして、席についた。