嫌われ者に恋をしました
「その代わり、今年度の分を少し減らして次年度に回していいことになったから」
そう言って席を立つと、隼人は雪菜の横に来て資料を机に置いた。
「こっちが必ず行かないといけない営業所。こっちは次年度に回してもいい営業所。次年度に回せると言ってもできるだけ数はこなさないといけないから、うまく組み合わせて調整して」
隼人は資料を指差して説明した。隼人が横にいる気配を感じながらその長い指を見た途端、急に雪菜は隼人の無骨な指に色気を感じてしまった。
この長い指が私の中をかき回したんだ。そう思ったら、ボッと顔が赤くなったのを感じた。
「どうかした?」
「……優先順位はありますか?」
「上から順に高いかな。後は何かある?」
「いえ、ありません」
「じゃあ、日程調整頼んだよ」
「はい。調整後、行かないことになった営業所にも連絡を入れておきます」
「ああ、そうだね。頼むよ」
隼人は雪菜のそばを離れると、自分の席に戻った。雪菜はスッと歩く隼人をチラッと見た。
スーツ姿はこんなにスマートなのに、のしかかると意外と重い。またそんなことを思い出してしまって、耳元に聞こえたあの息遣いを思い出して、カアッと耳まで熱くなった。
私、どうしちゃったんだろう。こんなエッチなことばっかり思い出して……。私、そんなにエッチな子だったかな。
雪菜は額に手をあててうつむいた。