嫌われ者に恋をしました
「雪菜を家に送り届けたら、もう一度出かけないといけないんだ」
「え?お出かけですか?」
「うん。今日は専務からお誘いがあってね」
「え!そんな大事なお誘い……、時間は大丈夫ですか?」
「大丈夫。何より雪菜が優先だから」
隼人はそんなことを言ってにっこり笑った。専務より私を優先するなんて……。嬉しいけど大丈夫なんだろうか。
話を聞くと、取締役や専務をはじめとした偉い人たちのお誘いは時々あるらしい。そんな上の人たちからお誘いがあるなんて……。全然知らなかった。
それに、人によっては女性がいるお店に行くこともあるらしい。正直に言ってくれたのは嬉しいけど、ちょっと面白くない。
「仕事の付き合いだから仕方ないよ」
「それでも、綺麗な人に隼人さんがどんな顔でお酒を作ってもらうのかと思うと心穏やかではいられないのです」
雪菜がそう言うと隼人は笑った。
「どんな顔って、課長の顔だよ」
「……」
でも、冷たい課長もカッコイイから……。綺麗な女性にモテてしまうのではないの?綺麗な女性に目はいかないの?
「ヤキモチを妬いてくれるのは嬉しいけど、いつ、どこにいても、俺の心は雪菜のところにあるよ」
そんな台詞で、ごまかされないもん。雪菜はふくれた顔をした。
「俺が愛してるのはただ一人、雪菜だけだよ。だからいい子で待ってて、雪菜」
「……はい」
結局うなずいてしまった。私って簡単な女、なのかな……。
面白くはないけど、お仕事だし、何より隼人さんを信じてる。雪菜はため息をついて、モヤモヤしたヤキモチを振り切った。