嫌われ者に恋をしました
(2)牽制球
雪菜は隼人と一緒に住むようになって、初めて知ったことがたくさんあった。
隼人は平日お酒の席に誘われて出かけることが多い。監査の日は、雪菜を食事に連れて行くためにわざわざ予定を開けていたらしい。それを知ってちょっと嬉しくなった。
それに、見た目は家事なんて全然できなそうなのに、料理もできるし掃除洗濯も手早くて、本当に驚いた。
雪菜は、家に住まわせてもらっているから家事は私が……と提案したが、結局平日は雪菜が家事をして、休日は隼人がすることになった。
それでも無理にやらなくていいから、できない時はできる方がやろう、と隼人は微笑んだ。私にはもったいないくらい素敵な人。元カノさんが彼をフッてくれたことに感謝してしまう。
いつもは上の人から誘われて飲みに行くことが多いのに、今日は同僚と飲み会らしい。
朝そんな話を聞いて、雪菜がじっと見つめたら、言いたいことに気がついたのか「行くのは居酒屋だから!」と隼人は苦笑いをした。女性のいるお店に行くのは上の人と行く時だけなのかな。
綺麗な女性を見慣れているのに、私なんかでいいのかな、と時々不安になってしまう。私のどこがいいんだろう。でも、一緒にいるとすごく愛されているのを感じる。
不安なんて、感じなくてもいいのかな。このまま幸せに浸ってしまって、いいのかな。