嫌われ者に恋をしました
「最近雪菜、家にいないみたいなんだよねえ。お前の家にいるのかな?」
コイツ、やっぱり雪菜の家に行ったのか。念のためとはいえ、雪菜をうちに住まわせて正解だった。
「どこにいようと勝手だろ。今度雪菜に何かしたら許さねーからな」
「許さないって、どうするのかなあ?今回ばかりは俺の方が有利なんだよ?松田君!」
なんだよコイツ。俺をライバル視でもしてるのか?バカバカしい。コイツじゃライバルにもならない。
だいたい、出世できないのは自分のせいだろう。瀬川の仕事ぶりは販売促進課で一緒だった時しか見ていないが、コイツは仕事ができる奴じゃない。
「どうすんの?まあ、雪菜を切り捨てる選択をしたってお前のダメージにはなるんだぜ。付き合ってる女の淫乱な写真バラ撒かれたなんて、学閥の幹部候補の経歴には相応しくないだろうからねえ?」
俺が雪菜に惚れていることに気がついた観察眼は褒めてやろう。そういうのをもっと有効に活用すればいいんだよ、このどアホが!
「俺はどっちも選択しねーよ」
「松田君、自分の立場わかってんの?」
「わかってねーのはお前の方だよ」
「強気だねえ。松田君、負けず嫌いだもんね?美生ちゃんの時も顔には出さなかったもんね。みんなには俺からバラしておいたけどさっ」
ずいぶんと嫌われたもんだ。そんなことする暇があるんだったら仕事しろ。