嫌われ者に恋をしました

 急に隼人が緊迫した様子で戻ってきたから、雪菜は困惑していた。

 トイレに行こうと席を立っただけで「どこに行くの?」と付いてくるし……。とにかく私が一人にならないように警戒していた。

 ……瀬川さんと何かあったのかな。こんなに警戒するなんて。瀬川さんがまた襲うとか言ったんだろうか。

 いつもなら、私が先に会社を出て家に帰るのに、今日の帰りは会社を出る時も一緒で、とにかく私のそばから離れなかった。

「こんなに一緒にいたら、バレてしまいませんか?」

「雪菜を危険にさらすよりはマシだよ」

「……何かあったんですね?」

「うん、帰ったらね」

「……はい」

 途中の道のりは長く感じた。隼人さんと一緒に電車に乗って帰るなんて、嬉しいけど、本当に誰かに見られてしまいそう。会社の人に見られたら、仕事中ってことにするのかな……。

 家まで帰ってきて玄関を閉めたら、いきなり抱き締められた。

「今日はもう家から出たらダメだよ」

「一体どうしたんですか?」

「……瀬川が喧嘩を売ってきたから、牽制したんだ」

「喧嘩を売ってきた?」

 雪菜が首を傾げると隼人はため息をついた。
< 323 / 409 >

この作品をシェア

pagetop