嫌われ者に恋をしました
急に隼人が緊迫した様子で戻ってきたから、雪菜は困惑していた。
トイレに行こうと席を立っただけで「どこに行くの?」と付いてくるし……。とにかく私が一人にならないように警戒していた。
……瀬川さんと何かあったのかな。こんなに警戒するなんて。瀬川さんがまた襲うとか言ったんだろうか。
いつもなら、私が先に会社を出て家に帰るのに、今日の帰りは会社を出る時も一緒で、とにかく私のそばから離れなかった。
「こんなに一緒にいたら、バレてしまいませんか?」
「雪菜を危険にさらすよりはマシだよ」
「……何かあったんですね?」
「うん、帰ったらね」
「……はい」
途中の道のりは長く感じた。隼人さんと一緒に電車に乗って帰るなんて、嬉しいけど、本当に誰かに見られてしまいそう。会社の人に見られたら、仕事中ってことにするのかな……。
家まで帰ってきて玄関を閉めたら、いきなり抱き締められた。
「今日はもう家から出たらダメだよ」
「一体どうしたんですか?」
「……瀬川が喧嘩を売ってきたから、牽制したんだ」
「喧嘩を売ってきた?」
雪菜が首を傾げると隼人はため息をついた。