嫌われ者に恋をしました

「雪菜……、瀬川に写真を撮られたことなんてある?」

「え?写真、ですか?」

 隼人の言っている意味がわからず雪菜は首を傾げた。

「いや、撮られてないならいいんだ」

「は、はい……」

「雪菜は嫌かも知れないけど、場合によっては被害届を出してもらうかもしれない」

「この間のこと……、ですか?」

「うん。アイツの出方によっては、ね」

「……」

「やっぱり嫌?」

「いえ、出すべきであれば出します。……瀬川さんと何があったんですか?」

 隼人は少し黙って考えてから口を開いた。

「瀬川はね、俺のことが嫌いなんだよ。瀬川は俺への嫌がらせで雪菜を襲ったんだ。……本当にごめん。俺のせいで雪菜に怖い思いをさせてしまって」

 隼人は雪菜の髪を何度も撫でて、強く抱き締め直した。

「そんな……隼人さんのせいではありません」

「いや、俺のせいなんだ。しかも、大人げなく売られた喧嘩を買ってアイツのプライド、叩き潰しちゃったから。アイツまた雪菜を狙うかもしれない。雪菜のことを考えたら、あんなに挑発するべきじゃなかったのに……。ごめん」

 雪菜は隼人をじっと見上げた。

「そんな……、謝らないでください。隼人さんは悪くありませんから」

「雪菜……」

 隼人は雪菜を見つめてキスをすると、額をくっつけた。
< 324 / 409 >

この作品をシェア

pagetop