嫌われ者に恋をしました

 「早く行かないと、お友達との約束に遅れますよ」と雪菜が言っても、隼人はなかなか離れようとしなかった。

「じゃあ、行ってくる」

 雪菜に何度もたしなめられて、隼人は渋々もう一度キスをして出かけて行った。

 隼人が出かけて一人になると、雪菜はソファに深く腰を掛け、ため息をついた。

 どうして瀬川さんが私をまたターゲットにしたのかわからなかったけど、隼人さんへの嫌がらせだったなんて……。

 隼人さんへの嫌がらせなのに私を狙うなんて瀬川さんらしいやり方かもしれない。

 瀬川さんが隼人さんを嫌い……?そうだっただろうか。よくわからない。瀬川さんはいろんな人が嫌いで、たくさん悪口を言っていた。

 今考えると、卑屈な人。人の悪口を言わない隼人さんのそばにいると、そんな風に思えてしまう。

 でも、写真って何だろう。写真を撮られた?写真なんて撮ったことはないと思うけど。

 喧嘩を売られたって、もしかしたら私の写真を持っているとか言われたのかな。裸の写真、とか?そんな覚えはないけれど、眠っていたらわからない。でも、瀬川さんは私が眠る前にいつも帰っていたから、やっぱり写真なんてないと思う。

 隼人さんは自分を責めていた。万が一、私が瀬川さんに何かされたら隼人さんは後悔してしまうだろう。……隼人さんのためにも、少し気をつけて過ごした方がいいのかもしれない。
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