嫌われ者に恋をしました
「カンパーイ!」
「昇進おめでとう」
「いやいや、松田課長には遠く及びませんよ。俺なんてやっと係長なのに、お前はとっくに課長だからな」
神崎はお手上げという素振りを大げさにして見せた。
「そもそも松田、お前1年しか係長やってないだろ?」
木村が焼き鳥の串を突き付けて絡んできた。
「係長の数を減らしてるからだろ」
「それだけが理由じゃねーだろ?俺たちこれから5年間は係長だぜ?どうしてくれんのよ」
「そうだよー。それに松田、異動も多いだろ?明らかに経験積ませるためじゃんよ」
「やっぱさ、学閥は違うよな」
「もういいよ、俺の話は」
「いやいや、未来ある松田先生に俺たちはどこまでも付いて行きますよ」
「付いてくんな、気持ち悪い」
二人とも悪乗りを始めたから、隼人はわざと機嫌が悪い顔をした。
「そんな怖い顔してたら嫌われっぞ。ただでさえ嫌われてんのにさ」
二人はゲラゲラと笑った。
「いいんだよ、別に」
「まあね、お前みたいに出世が確定してると面白く思わねー奴もいるからな。付き合ってやってる俺たちに感謝しろよ。そして将来は恩恵をくれ!」
「バカだろ、お前」
面白く思わない奴の嫌がらせの類いにはもう慣れた。今まで散々見てきたが、正直、男の妬みほど醜いものはない。……でも、俺自身ではなく付き合ってる子に嫌がらせをしたのは、瀬川が初めてだ。
アイツ、本当に腐ってるな。
出世に関して言えば、確かに学閥の影響は大きいし、その波に乗っているのは事実だ。でも、それだけじゃない。学歴を振りかざして何の努力もしていない、みたいな言い方をされるとなんかムカつく。