嫌われ者に恋をしました
「話は変わるんだけどさ」
「うん」
「……お前のところの小泉さんって」
「?」
神崎が急に話題を変えて、雪菜のことを言い出した。
「かわいいよね?」
「は?」
「そうそう、最近人気急上昇中だよな」
なんだと!それは聞き捨てならない。でも、取り乱さないように答えた。
「そうなんだ?」
「そうだよー、黒髪美人って感じでさ。美人とかわいいの中間、みたいな?いいよな、松田!あんなかわい子ちゃんと二人きりで仕事してんだろ?」
「お前、ちゃんと仕事してんのか?」
「してるよっ!」
「小泉さんってフリーなんだろ?俺、アタックしちゃおうかなー」
「……」
二人は隼人をじっと見た。
「なんだよ?」
「素直じゃないねー」
「お前、小泉さんのこと好きなんだろ?」
「は?」
「お前はね、わかりやす過ぎなんだよ。あんなに優しい瞳で見つめちゃいかんでしょ。他の奴には凍りつくような視線を送るくせにさ」
「え……?」
「まあ、前のしょーもない恋を忘れられて、良かったじゃない?」
「……」
「惚れてるんなら、早くゲットしないと俺がもらっちゃうよ、小泉さん」
「……」
二人は俺たちが付き合っていることには気がつかなかったらしい。
……俺ってそんなにわかりやすいのか?瀬川にも見抜かれたし。もう少し自覚すべきだな。こんなんじゃ、社内にバレるのは時間の問題かもしれない。
「まあ、うまくいったら教えてよ」
「フラれたらヤケ酒付き合ってやるからさ」
「思いっきり玉砕してこい!砕け散ってこい!ギャハハ!」
二人はその後も隼人をネタにゲラゲラ笑って酩酊していったが、隼人は瀬川が辞めることや雪菜のことがバレたことが頭から離れず、二人のペースに合わせて飲む気にはなれなかった。