嫌われ者に恋をしました
またかかってきたら面倒だから、携帯の電源を切った。3年間音信不通だったくせに、いきなり何なんだ。
きっと、あの青年実業家とうまくいっていないんだろう。だからってまた俺かよ!
マンションに住む権利だなんて、頭金だってほとんど出していないくせに、腹が立つな。
ただでさえ瀬川から雪菜を守ることで頭がいっぱいなのに、美生の気まぐれに付き合ってる暇はない。
イライラしながら玄関の扉を開けるといつも駆け寄ってくる雪菜の姿がなかった。期待していたのに。
先に寝ていいからね、と言っても雪菜は必ず起きて待っていてくれる。それなのに……。
まさか、何かあった?
ドスドスと急いでリビングに入ると、すぐに緊張の糸が切れてほっとした。雪菜はソファに丸くなって眠っていた。待っていてくれたのに疲れて寝てしまったんだろう。
美生の電話さえなければ、黒い瞳を見つめることができたかもしれないのに。余計なことを……。
抱き上げようと体の下に腕を差し込んでも、雪菜は起きる気配もなく、深く眠っていた。
今日は瀬川のことで変に緊張させてしまっただろうか。もっとオブラートに包んだ伝え方をしてあげればよかった。
雪菜のこととなると、どうしていつも不器用になってしまうんだろう。いつも後悔ばかりしているような気がする。