嫌われ者に恋をしました

 今日は金曜日。土日は「課長」じゃない「隼人さん」とずっと一緒にいられる。「課長」もすごく素敵だけれど、やっぱり隼人さんの方がいい。今までこんなに土日を楽しみに思うことなんてなかった。

 気が緩んでうっかり時間内に談笑してしまったら、それが経理課に聞こえたらしく片倉課長と綾香がパーテーションからひょこっと顔を出した。

 その途端、隼人は眼鏡をスッと直して、冷ややかな視線を向けた。

「……なんですか?」

「笑い声が聞こえたから、空耳かと思ったんだけどね」

「松田課長も笑うんですね?」

「俺だって笑うことくらいあるよ」

 綾香はニコッと微笑んで雪菜を見た。

「小泉さん、最近すごくかわいくない?」

「ええっ?いえ、そんなことは……」

「恋をすると女は変わるからねえ」

 綾香に見つめられて、雪菜はおろおろした。もしかしてバレてしまった?それを見て、片倉課長もニヤッとした。

「最初からお似合いだと思ってたよ、松田君」

「お二人の方がお似合いですよ」

「……」

「?」

 じっと睨み合う二人の課長。なんだろう、これ?

「チッ、ここは引き分けだな」

「お互いのために、引いてください」

 片倉課長は悔しそうに舌打ちをしながら去って行ったが、綾香は最後まで微笑んで雪菜を見ながら去って行った。
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