嫌われ者に恋をしました

 雪菜は怖いと思いつつ、結局流されてしまったというか、わずかな好奇心も働いて、美生と一緒に喫茶店に入ってしまった。

 向かい合わせに座った時、雪菜はこっそり美生を盗み見た。本当に綺麗な人。栗色の髪はなめらかで、まつ毛も長くて瞬きをするたびに音がしそう。服装も清楚で上品だし、爪の先まで艶々している。

 隼人さんはこういう人が好きなんだ。それなのに、どうして私なんか……。美生を見れば見るほど、ろくに化粧もしない自分が惨めに思えて、雪菜はフイッと目をそらした。

「あなた、隼人と付き合ってどのくらい?」

「そ、それは……」

 付き合ってからまだ1か月も経っていない。でも、そんなことを言ったら短いとか言われそうで口ごもった。

「まあ、いいけど。ねえ、知ってる?」

「?」

「私と彼、今も続いてるのよ」

「エッ……!」

 いきなりストレートな宣戦布告。でも、この人は嘘をついている。隼人さんは私のことが好きなんだもん。もう、あなたのことなんか好きじゃないもん。

「あなた、彼が学閥だから近づいたのかもしれないけど、そんなの無駄よ」

「……ガクバツ?」

 雪菜は一瞬言葉の意味が分からなくて、首を傾げた。

「……ええ、学閥」

「……?」

 美生もしばらく黙って瞬きをしながら、首を傾げる雪菜をじっと見つめた。

「もしかして、あなた何も知らないで付き合ってるの?」

「何を、ですか?」

「呆れた。そう……、知らないの」

 美生は頬杖をついて、しばらく考えているようだった。
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