嫌われ者に恋をしました

「学閥っていうのはね、役員の大多数を占める出身大学の派閥のことよ。役員が自分の権力を揺るぎないものにするために、自分の息がかかった出身大学の後輩を有利に出世させて、立場を固めるの。
 あなたがお勤めの会社はね、5、6年前まで伝統的に慶応が学閥として牛耳ってたけれど、経営不振とか不正とかいろいろあって経営陣が代わってから東大が学閥になったのよ」

 雪菜は今一つピンとこなくて、熱弁をふるう美生を冷めた瞳で見つめた。

「それが、どうかしたんですか?」

「……あなた、大丈夫?学閥だから、隼人は出世が早い幹部候補なのよ!他にも東大出身者は何人かいるけど、その中でも隼人はきっちり実績を作ってきたから、上の人から重宝されてるのよ!」

 そうなんだ。隼人さんは仕事のできる人だから、それはそうかもしれない。そういえば、前に綾香さんが隼人さんのこと、若くして管理職になったって言ってた。

「だから、遊ばれてるって言ってるの」

「?」

 出世と遊ばれていることがどうしてつながるのか、全然わからず首を傾げた。

「隼人から聞いてるわよ。あなた、瀬川さんと付き合ってたんでしょ?」

「!!」

 驚いて息を飲んだ。どうしてそんなこと知ってるの……。本当に隼人さんがこの人に言ったの?

「瀬川さんって出世のために役員の娘と結婚していたでしょう?」

「……」

 確かにそう。瀬川さんの奥さんは偉い人の娘だと聞いている。瀬川さんはその偉い人の悪口をよく言っていた。

「隼人だって同じよ。いずれは役員の娘と結婚するの。あなたとはその前にちょっと遊んだだけなのよ」

 そんなの信じない。負けたくない!
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