嫌われ者に恋をしました
雪菜はキッと美生を見据えた。
「隼人さんはそんな、遊びで手を出すような人じゃありません!それに、隼人さんはそもそもあなたと結婚するはずだったのに、あなたが捨てたんですよね?それなのに、役員の娘と結婚するなんて、おかしいじゃないですか?」
「彼のために私から身を引いたの。私のために彼の未来をダメにしたくなかったから」
「あなたが二股をかけていたんでしょう?もう別の男性とご結婚されていますよね?」
さっきから気がついていた。左手薬指のキラキラ光る指輪。
「そりゃ、私だって生活のために結婚くらいはするわよ」
「生活のためって……」
美生の考え方が理解できなくて、雪菜は言葉を失った。
「隼人、私が結婚していようと自分が結婚しようと、私との関係はやめられないんですって。でも、最近少し冷たくしてしまったから面白くなかったのね。あなたに手を出したりして」
「そんなのっ!」
「嘘だと思ってるの?」
「そんなの、嘘です」
「かわいそうな子ね。陰で何を言われているのかも知らないで」
雪菜はだんだん不安になっていく自分を奮い立たせて美生を睨み続けたが、美生は気にする様子もなく、余裕な笑みを浮かべて人差し指を顎にあてると、まばたきをしながら斜め上を見た。
「不倫なんてしていた悪い子、でしょ?」
「……」
「友だちのいない痛い子。親に叩かれて育ったどうしようもない子」
「!」
どうしてそれを!……本当に隼人さんから聞いたの?本当に隼人さんはこの人と続いているの?
「背中に跡があるんでしょ?」
驚いて目を見開いた。どうしてそんなことを知ってるの?……もう、ダメかも。何も聞きたくない。
「あんな汚い傷、見たことないって言ってたわよ」
鈍器で殴られたみたいな、いきなり耳が詰まって音が聞こえなくなったような、強い衝撃に襲われた。