嫌われ者に恋をしました
……どういうこと、だろう。どうしてこの人がそんなこと、知っているんだろう。
息ができない。視線を動かせない。頭の奥が痺れて脳みそがモヤモヤしているみたい。
隼人さんはまだこの人と続いてるんだ……。私のことをこの人に話したんだ。私はちょっと寄り道してつまみ食いしただけってこと?
どんな私でもどんな傷があっても愛してるって言ってたのに!本気で信じていたのに!それなのに、陰でそんなこと言われていたなんて。
私、バカみたい。また男の人を信じてしまった。さぞ、おかしかっただろう。バカみたいに信じて甘えてしまった。あんなに心を開いてしまった。抱かれてあんなに感じてしまった。
本当にバカみたい。もうイヤ。もうイヤだ。私、何やってるんだろう。
ふと、美生が蔑むような目で見ていることに気がついた。……私のこと見ないで!もう消えていなくなりたい。
そう思ったら体の底から沸騰するように、自分を叩きたいという欲求が湧き上がってきた。
頑張ってやめていたのに、今自分を叩いたら昔の私に一瞬で戻ってしまう。どこからか自分の声が聞こえる。でも、叩きたい。叩かないではいられない。抑えられない。
大きく右手を振りかざして、思いっきり自分の頬に叩き落とすと、店の中にパンッと大きな音が響き渡った。
ああ、スッとする……。自分を叩くとスッとする。痛いけど痛くない懐かしい感覚。そして一度やり始めてしまうと、止められなくなることも知っている。
「ちょっと、何やってるのよ!」
美生の声は聞こえていたが、そのまま何度も思いっきり自分を叩いた。何度も叩いて右手が疲れたから、今度は左手を振り上げて叩いた。
両手が疲れて上がらなくなったら、少し気持ちが少し落ち着いて、雪菜は叩くのをやめた。