嫌われ者に恋をしました

 瀬川が何かしたわけではないのか……?とにかく瀬川より先に雪菜を見つけ出さないといけない。

 本当は家にいるんだろうか?隠れてるとか?確認のために、合鍵を使って雪菜の部屋の中に入った。でも、真っ暗な部屋の中には誰もいない。戻った形跡もなかった。

 どこに行ったんだろう。

 とにかく何度もメールをし、何度も電話をかけた。

 一度会社に戻ったが、もちろん誰もおらず、一緒に行った場所にもう一度行ってみたり、何食わぬ素振りで実家に電話をかけてみたりしたが、どこにも雪菜の影はなかった。

 もう一度家に戻ってみよう。そう思って隼人は自分の家に戻った。でも、玄関を開けても真っ暗なまま、雪菜は戻って来てはいなかった。

 どこにいるんだよ、雪菜……。

 隼人は祈る気持ちでもう一度電話をかけた。

 何度かコールが鳴って、やっぱり出ないかと諦めかけた瞬間、フッと通話になった。

『しつこい!』

「え?」

 電話に出た!でも、誰……?

『しつこいよ、課長』

「……もしかして、笠井さん?」

『雪菜を泣かせたら許さないって私、言いましたよね!こんなつもりで間に入ったわけじゃなかったのに!』

「どういうことだよ?今どこにいるんだよ!」

『雪菜は私んちで預かっています』

「そうか!……良かった」

 友達の家なんて、考えてみたら一番行きそうな場所なのに。焦りすぎて見過ごしていた。

 雪菜の居場所がとりあえず掴めて、心の底からほっとした。彼女の家なら瀬川に捕まることもないだろう。

『良かないですよ!もう雪菜、泣いて泣いて、それはもう大変だったんだから!』

 電話の向こうで美乃里は声を荒げた。
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