嫌われ者に恋をしました
「今はどうしてるの?」
『疲れたみたいで寝ちゃいましたよ。だから、私が電話に出たんです。今は家の外に出て話してるんですよ』
「そうか……。ありがとう」
『……いえ、別に!雪菜をあんなに泣かせて、いったい何があったんですか?』
「それはこっちが聞きたいよ」
しばらく二人とも黙ってしまった。雪菜は何があったのか、話さなかったんだろうか。
『喫茶店に雪菜を置き去りにしたのは課長じゃないんですか?』
「喫茶店?何の話だよ」
『あれっ?違うのか……。いや、明日一緒に買い物行こうって連絡したんですけど、全然返事が来なくって。あの子、すぐ返事くれる子なのに。だから電話してみたんです。そしたら、泣きながら電話に出て、会社の近くの喫茶店にいるって言うから迎えに行ったんですよ』
喫茶店?一人ではいかないだろうな。でも、相手は瀬川じゃない。誰だ?
『自分の家には帰りたくないって言うから、私の家に連れてきたんですけどね。あんな雪菜、見たことないですよ、ホント』
「何があったのか、言わなかった?」
『ええ。私はてっきり課長と喧嘩でもしたんだと思ってました。もう別れるって、会社も辞めるって言うから』
俺と別れるだって?その言葉を聞いて、胸をえぐられるような激しい痛みを感じた。別れるなんて、俺から離れるなんて絶対に許さない。
『とにかく荒れてて、目を離すとすぐ自分のことを叩くから、目が離せなくて』
「は?なんだよ、それ」
美乃里の言った台詞がよくわからず、思わず聞き返した。