嫌われ者に恋をしました
部屋に入ると、インターホンが光っていたから何気なく再生ボタンを押して、ハッとした。
「美生……」
間違いない。雪菜に会ったのは美生だと確信した。
全貌が見えてきた。おそらく、美生と瀬川が結託したんだろう。美生と瀬川は販売促進課で一緒だった。アイツら今でもつながっていたのか……。
美生が雪菜に会って俺から引き離し、そこを瀬川が狙う計画だったに違いない。そして美生がうちに来たってことか。……笠井さんがいてくれて本当に良かった。
美生はいったい何を雪菜に言ったんだろう。俺と別れるよう、ひどいことを言ったんだろうか。……許せない。
あの日突然電話が来てから、何度か美生から電話がかかってきたが、ほとんど話もせず相手にしなかった。
今さらよりを戻したいなんて、そんな都合のいい話があるか。「私のために付き合ってる子と今すぐ別れて」なんて、そんなのありえないだろう。
だいたい、相手にしなかったのは俺なのに。それなのに雪菜を傷つけるなんて……。美生といい瀬川といい、どいつもこいつも腐ってる。
俺のせいでまた雪菜を傷つけてしまった。雪菜を守れなかった。俺は姫を守る王子になんてなれない。
雪菜……。今すぐ抱き締めたいのに。胸が締め付けられて痛くてたまらない。